中学クラスで「成功・失敗・努力」について
意見交換の時間を作りました。
レッスンではみんな、とても素直で能力溢れる中学生ですが、
何といっても揺れるお年頃。
完璧を求めるあまり、自分の世界を狭めてしまう、
そんな轍にはまっているのが分かりました。
あなたにとって「成功」とは、どちら?
①賢さを証明すること
②学び成長すること
この問いに出席者全員が①と答えました。
更に次の質問。
「失敗(間違い)とは?」
これに対してはたくさん出てきました。
汚点、恥、途方に暮れる、
心が折れる、周りの目が怖い、全否定される気持ち、
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「賢さを証明すること」と答えた思考を、【固定思考(完璧主義)】、
「学び成長すること」を選んだ人を【成長志向】
と呼ぶそうです。
※固定思考=才能は生まれつき。努力は必要ない
※成長志向=努力すればするほど能力は向上する
固定思考の子どもにとって、間違いは、もはや優秀扱いされない「汚点」。
なので、間違えた時は、「言い訳」や、自分より劣る人を探すそうです。
スタンフォード大による、ある実験があります。
子ども400人に簡単なテストをした後、
2グループに分け、ある「言葉かけ」を変えてみました。
(スタンフォード大学心理学教授/キャロル・ドゥエック氏)
常に知能を褒める(頭がいい!点数がすごい!)固定思考グループ。
努力のプロセスを褒める(本当によく頑張ったね!自分でできたね!)成長志向グループ。
その後、子どもたちに難易度の異なるテストを選ばせたところ、
知能を褒められた子どもたちは、失敗を避けられる簡単なテストを選ぶ傾向が強く、
一方、努力を褒められた子どもたちは難しいテストを選び、時間をかけて挑戦する姿勢を見せたそうです。
「頭が良い」という評価を失いたくない、固定思考。
「もっと頑張りたい」と思う、成長志向。
最後に、子ども達は、最初のテストと同じ難易度のテストを受けます。
さて、どうなったでしょう?
知能をほめられたグループの実績は、難易度が同じにもかかわらず、
なんと、最初のテストに比べて20パーセント低下。
一方、努力をほめられたグループの点数は30パーセント増加。
挑戦が、むしろ彼らを駆り立て、逆転の結果となったのです。
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さて、最初の中学生たちに話を戻します。
この子達が証明するように…いえ、この子達だけではありません。
私達の世界には「固定思考(完璧主義)」が満ちています。
間違えることを恐れて、挑戦を避け、
努力なしに好成績を出すことこそが優秀さの証明だと私達の多くが信じています。
そう、努力。
「努力」とは?
と質問をしたところ、
劣った人だけに必要。
天才は没頭するため、努力を努力と思わない。
努力してダメだった(間違えた)ら、言い訳がなくなる。だったら努力しない方がまし。
この思考は人生において膨大な不利益をもたらします。
なぜなら、
人生において重要なことは全て、
長期間にわたる膨大な努力を必要とするからです
努力が不要と思えるような優秀な子もいるでしょう。
ですが、抜きんでた才能が、仇になることがあります。
かつて「神童」と呼ばれた人たちの多くは、努力なしで成功できると思いこみ、周りの人もそう信じていたので、何もせず待つだけで努力を避けた結果、能力は衰え、成長志向に追い越され、人生が狂ってしまっています。
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間違うこと(失敗)への恐怖が、多くの子どもを学習と成長から遠ざけています。
きっかけはおそらく他愛もない周りからの一言。
「全然勉強しなかったのに、すごいじゃん!」
「すぐできるなんて、頭いい!」
この何気ない褒めことばの裏返し、
「下手に努力すると優秀だと思われないかも」
「時間がかかったら頭が悪いと思われる」
ここに、子ども達は敏感に反応しているのでしょう。
もし、子ども達に、成長志向を持たせたいなら…
常にベストを尽くし、間違いから得られる収穫を搾り取ろうと、がむしゃらに難問に食らいつき向上するマインドを育てたいなら、今、私達おとなは、どんなことを始めたらいいでしょうか。
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私自身、この視点を知る前…息子たちが中高生時代、
点数や成績表といった「結果」だけを叱咤激励の材料として使っていました。
励ましのつもりでしたし、
高得点を取る=成功経験
だと信じていたのです!
逆に、点数が低いことはネガティブにとらえていました。
結果より努力にもっと耳を傾ければよかったのに。
このブログでも過去に「減点法では自信をなくす」といった内容を書いたりして
やっぱり間違いを恐れていた自分がいると感じます。
「コツコツよくがんばったね!」
「努力が実ったね」
「前よりできるようになったね!」
「難しかったのに、あきらめずにやりきったね」
「あれだけやったのだから、きっと次につながるよ!」
努力を認められた時の、教室の子ども達の目つき ✨
「次はもっと頑張る!」そんな意気込みを聞くにつけ、
成長志向の視点を知って良かったと思います。
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この研究結果が示すまでもなく、
学び、成長することこそが成功
間違いや挫折は災難どころか、
成長の糧
間違いから目を背けるのではなく、そこから何を学び取るか。
褒め言葉なら、今すぐ変えられます。
5年後、子ども達が、チャレンジ精神にあふれ、楽しみながら学ぶ姿を思い浮かべながら
今、私にできることを、大切にしていきたいと思います。
(2022年)
↓スタンフォード大学の研究について(日本語字幕を選択できます)
